2011/12年度の主要農産物に対する洪水の影響
■■作物
■飼料用トウモロコシ
●洪水前の状況と予測
①生産
2011/12年度の飼料用トウモロコシの作付面積は703万ライで前年度の725万ライより3.03%減少している。これは農家が干ばつを恐れ、干ばつに強く、利益の高いキャッサバや加工用トウモロコシに転作していることや北部の飼料用トウモロコシの栽培農家はパラゴムを間作していたが、パラゴムが成長し、飼料用トウモロコシを栽培できなくなったためである。1ライ当たりの収量については656kg/ライとなり、2010/11年度より1.55%増加している。これは天候が栽培条件に適していることや飼料用トウモロコシの成長に十分な雨量があるためである。しかし、作付面積が減少していることから、生産量は461万トンとなり、2010/11年度の468万トンより1.50%減少している。
飼料用トウモロコシは高地や山麓で多く栽培されており、主な産地はペチャブン県、ルーイ県、ナコンラチャシマ県、ターク県、ロッブリ県、サラブリ県、ピサヌローク県、ナコンサワン県、チェンライ県、パヤオ県、ナン県、プレー県、カンペンペット県、サケオ県である。
農家は2011年6月に飼料用トウモロコシの収穫を始め、2011年8月から12月が収穫最盛期で生産量全体の93.14%が収穫される。なかでも9月が最も多く全体の25.35%が収穫されている。②国内消費
国内で生産された飼料用トウモロコシの約90%が国内で消費される。2011年は437万トン、生産量全体の94.79%の飼料用トウモロコシが国内で消費されると予測しており、2010年の428万トンより2.10%増加している。これは動物飼料産業の成長に伴い動物飼料製造用の需要が増加しているためである。③輸出
国内消費量の余剰分が輸出される。毎年30万トンの飼料用トウモロコシが輸出されている。2011年については2011年1月から11月の飼料用トウモロコシの輸出量は31万トンとなっており、生産量全体の6.72%となっている。2010年の同時期の輸出量は39万トンであったため、21.99%減少している。これは飼料用トウモロコシの国内需要が増加したことや2010年の始めの融資担保プロジェクトの飼料用トウモロコシを販売したためである。タイの貿易相手国はマレーシアおよびベトナムである。④輸入
タイは近隣国のラオスやカンボジアからタイ産のものより安価な飼料用トウモロコシを輸入している。2011年1月~11月の飼料用トウモロコシの輸入量は20万トンで、2010年の同時期は33万トンを輸入していたため、41.44%減少している。2011年は25~30万トン輸入すると予測している。⑤農家庭先価格
飼料用トウモロコシは市場の出荷時期や世界市場の価格によって変動する。(シカゴの先物市場価格、米国は世界第1位の飼料用トウモロコシの生産国である。)
2011年の世界市場の飼料用トウモロコシの価格は需要が生産量より多いことから高い水準で変動している。シカゴ市場の平均価格は平均266.73ドル(8,161バーツ/トン)で2010年の163.81ドル/トン(5,186バーツ/トン)より62.83%または2,975バーツ/トン上昇している。2012年1月9日時点のシカゴ先物市場の平均価格は256.69ドル/トン(8,197バーツ/トン)と2011年7月の261.57ドル/トン(8,383バーツ/トン)より1.87%上昇している。
農家庭先価格は2011年8月~2012年1月の間で上昇傾向にあり、2011年8月の7.22バーツ/kgから2012年1月には8.50バーツ/kgとなっている。2011年全体では平均で7.61バーツ/kgとなっている。●洪水後の影響予測
①2011/12年度の生産
飼料用トウモロコシの栽培地は高地や山麓にあるため、農家は洪水の影響を受けていないが、生産量はわずかに減少しており、全体の5.42%減となっている。飼料用トウモロコシの作付面積は39万ライ、生産量は25万トンに被害を受け、被害額は14億9,663万バーツになる。(2011年11月28日時点の洪水状況) 洪水の被害を受けた県は、カンペンペット県、ピサヌローク県、スコータイ県、ターク県、ペチャブン県、プレー県となっている。そのため、洪水の被害を受けた生産量を差し引くと、飼料用トウモロコシの生産量は436万トンになる。②国内消費
洪水発生後の在庫の量が国内需要を十分満たすことができると予測しているため、国内消費量は洪水の影響を受けていない。③輸出
生産量の約90%が国内消費用のため、輸出向けはそれほど余剰分がないため、飼料用トウモロコシの輸出は洪水の影響を受けていない。しかし、輸出業者は輸送ルートに障害による影響を受けた。飼料用トウモロコシは洪水の被害にあったアユタヤ県から船で輸送されていたため、チャチェンサオ県のバンパコン郡まで持ち込まれ、船で輸出された。④価格
洪水の影響で陸運、海運ともに輸送ルートの障害による影響を受けた。そのため、業者は動物飼料製造工場までの輸送経路が長くなり、業者は需要を満たすために高い買取価格をつけた。動物飼料製造業者は通常とおりの生産が可能であったが、輸送費の上昇に伴い、飼料用トウモロコシを高値で購入しなければならなかった。ランシットにある動物飼料製造工場1件のみが洪水の影響で製造を一時的に停止しなければならなかった。■キャッサバ
①生産
●洪水前の状況と予測
2012年のキャッサバの生産量(2011年10月から2012年9月に収穫されるもの)は収穫面積が736.7万ライ、生産量が2,510.8万トン、1ライ当たりの収量が3.431トン/ライとなり、2011年の収穫面積709.6万ライ、生産量2,191.2万トン、1ライ当たりの収量3.088トン/ライより各3.82%、15.58%、1.36%増加すると予測している。2012年1月から3月に最も出荷量が多く、この時期に生産量全体の54.03%が出荷されると予測している。
②国内消費
国内消費は生産量全体の30%で、2011年の国内需要は630万トンとなっている。2012年は760万トンになると予測しており、キャッサバチップが160万トン、キャッサバ澱粉500万トン、エタノール製造用が100万トンとなっている。
③輸出
キャッサバ芋の生産量の約70%が輸出向けに加工される。2010年のキャッサバ製品の輸出量は673万トン(1,972万トン生鮮キャッサバ芋)となっている。2011年の11月期(1月~11月)のキャッサバ製品の輸出量は557万トンとなっており、輸出額437.06億バーツとなっている。2012年のキャッサバ製品の輸出量は600万トン(およそ1,600~1,800万トン生鮮キャッサバ芋)になると予測している。
④価格
2011年4月からキャッサバの価格は継続的に下落している。これは2011/12年度のキャッサバの生産量が増加すると予測されているためである。そのため輸入先国が状況を見据えて、受注が停滞している。しかし、2011年11月~12月に政府がキャッサバの市場介入政策を策定したため、キャッサバの価格は上昇した。キャッサバチップの輸出価格は良い水準にある。キャッサバ澱粉の輸出価格については下落し、2010年第2四半期とほぼ同じ水準にある。2012年のキャッサバの価格は各市場で上昇する傾向になると予測している。これは近隣国のインドネシアやベトナムが自然災害の被害を受け、生産量が減少しているためである。2011年12月の農家庭先価格は平均で2.45バーツ/kgとなっている。
●洪水後の影響予測
①生産
2011年12月19日時点の洪水状況のデータから2012年のキャッサバで被害を受けた作付面積は12.5万ライ、生産量は40.5万ライとなっている。被害を受けた県はチャイヤプム県、カンペンペット県、カラシン県、ピサヌローク県で、被害額は5億8,355万バーツとなっている。しかし、高地で栽培されているキャッサバの1ライ当たりの収量はキャッサバの成長に十分な雨量であったため増加していることから2012年のキャッサバの収穫面積は724.2万ライ、生産量は2,484.8万トンになると予測している。
②国内消費
洪水の影響で生産量は減少したが、わずかな減少であったため国内消費量に影響しない。しかし、国内価格および輸出価格が上昇すれば、動物飼料製造用の需要がわずかに減少し、国内需要はおよそ50万トン減少する。
③輸出
洪水の影響を受けていない。輸出業者はキャッサバ価格が上昇し、国内の生産量が少なければ、近隣国のカンボジアやラオスから輸入したキャッサバを輸出向けに加工するためである。
④価格
海外の市場からの需要が多いことが国内価格を上昇させるため、洪水の影響を受けていない。キャッサバ芋の平均農家庭先価格は2.50バーツ/kgの水準で変動し、キャッサバチップおよびキャッサバ澱粉は各7.50バーツ/kg、16.50バーツ/kgの水準で変動し、2011年の価格水準とほぼ同じと予測している。
■サトウキビ
●洪水前の状況と予測
①生産
サトウキビの栽培地のほとんどが主に雨水を利用している高地にある。2011/12年度のサトウキビの作付面積は805万ライで2010/11年度の787万ライより増加している。1ライあたりの収量も12.54トン/ライで2010/11年度の12.19トン/ライより増加している。生産量も1.0103億トンとなり、2010/11年度の9,595万トンより増加している。これは天候条件が適切なことやサトウキビの価格が良い水準にあることが農家のインセンティブとなっているためである。
②国内消費
サトウキビ・砂糖委員会が規定した2012年の砂糖の国内消費量はおよそ240万トンと2011年の250万トンより減少している。これは経済の衰退の影響で製造段階で砂糖を使用する製品の輸出が減少しているためである。
③輸出
タイは生産量全体の約75%を輸出している。2011年は716万トンの砂糖を輸出しており、2012年は780万トンの砂糖を輸出し、前年より8.94%増加すると予測している。これは国内の砂糖の生産量が増加しており、同時に海外からの需要も増加しているためである。
④価格
サトウキビの価格は世界の砂糖価格と同じトレンドで動いている。2010/11年のサトウキビの農家庭先価格は930バーツ/トンとなっている。2011/12年度は世界の砂糖価格が下落すると予測しているが、まだ良い水準を維持している。粗糖の価格は24セント/ポンド(15.87バーツ/kg)、製糖は602ドル/トン(18.06バーツ/kg)の水準で変動している。
●洪水後の影響予測
①生産
サトウキビは全部で13県の栽培地で被害を受け、被害を受けた作付面積は23,328ライ、生産量は331,200トン、被害額は2億346万バーツとなっている。地方別では以下のとおりである。
北部 ナコンサワン県、ウッタラディット県、カンペンペット県、スコータイ県、ペッチャブン県、ピサヌローク県、ランパン県、ピチット県の8県で、被害を受けた作付面積20,812ライ、生産量288,350トン、被害額は1億7,819万バーツである。
中部 シンブリ県、ロッブリ県、サラブリ県、チャイナート県、スパンブリ県の5県で、被害を受けた作付面積2,516ライ、生産量42,850トン、被害額は2,516万バーツである。
②国内消費
タイは国内需要を十分満たす量の砂糖を生産することが可能である。また、砂糖は国内で販売規制を受けている商品のひとつである。そのため、洪水は国内消費に影響していない。
③輸出
タイは世界第2位の砂糖輸出国である。上述の被害を砂糖にして計算した場合、約33,451トンまたは国内の生産量全体のわずか0.33%である。そのため、洪水は輸出に影響していない。
④価格
サトウキビ・砂糖委員会は2011/12年度の暫定保証価格を糖度10ccsで1,000バーツ/トンと設定した。糖度1ccsにつき60.00バーツ/トンの価格上昇/下落の変動がある。
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