2011/12年度の主要農産物に対する洪水の影響
■■水産
■養殖エビ
●状況(洪水前の予測)
①生産
2011年は養殖されている海水エビの生産量が約551,250トンとなり、前年の554,000トンと比較すると0.50%減少すると予測している。生産量全体の85%が輸出向けで、残り15%が国内消費向けとなっている。海水エビの主要な生産地はチャチェンサオ県、スラタニ県、ナコンシータマラート県、ソンクラ県、チャンタブリ県などとなっている。
②国内消費
養殖されたエビの約8万トンまたは生産量全体の約15%が国内消費量となっている。
③輸出
2010年のタイの輸出量は427,295トン、輸出額は1,011.4億バーツとなっており、前年と比較すると各7.14%、8.04%増加している。2011年(1月~11月)の輸出量は184,630トンで、輸出額は477億1,086万バーツであったため、前年同時期と比較すると各17.28%、1.86%減少しており、輸出量および額共に減少している。第4四半期のタイのエビおよびエビ製品の輸出は増加すると予測しているが、2011年通年では輸出量および額ともにわずかに減少すると予測している。しかし、タイのエビは今後も、商品の規格基準や衛生基準、さらにタイの主な輸出先の米国や日本、EUといった市場での経済問題など非関税の様々な障害に直面すると予測される。
④価格
④価格
2011年の農家庭先価格は平均で65.50バーツ/kgとなっている。PRRSの流行や生産量に影響する天候不順のため、2011年1月の55.51バーツ/kgから継続的に上昇しており、同年8月には76.44バーツ/kgとなり、37.70%上昇した。このため、豚の市場への出荷数が減少した。一方で、近隣国への生豚の輸出が増加した。しかし、豚の価格は同年9月より減少し始め10月、11月には大きく下落し、各65.12バーツ/kg、59.14バーツ/kgとなった。これは、多くの場所で降雨による洪水が発生し、市場への出荷量は増加する一方で、豚の消費需要が落ち込んだためである。また、洪水の影響を受けた養豚業者が飼育している豚を他の農場に移動させたことや、さらなる豚の価格下落を恐れた養豚業者が急いで豚を販売したため、一部の地域では価格が大きく下落し50~55バーツ/kgとなった。●洪水の影響
①生産
2011年5月28日時点の畜産開発局のデータによると、洪水の被害を受けた豚は296,880頭となっており、2011年の生産量全体の2.50%となっている。しかし、この数は被害を受けた全ての豚の数ではなく、豚を緊急に農場から出して移動させた数は含まれていない。②国内消費
洪水発生時には豚の消費量は減少した。しかし、洪水の被害を受けた豚の数は洪水後の国内消費量を不足なく満たすことができると予測している。③輸出
洪水の被害を受けた豚の数は輸出に影響しないと予測している。これは豚の輸出量が生産量全体のわずか5%に過ぎないためである。④価格
農家庭先価格 洪水発生時には豚の消費需要が減少したことから、豚の価格が下落したが、市場への出荷量は増加した。洪水の影響を受けた養豚業者が飼育している豚を他の農場に移動させたことや、さらなる豚の価格下落を恐れた養豚業者が急いで豚を販売したためである。国家養豚業者協会の代表からの聞き取りによると、2011年10月20日時点の豚の農家庭先価格は60バーツ/kgであった。しかし、一部の地域では洪水の影響により価格が大きく下落しており、55バーツ/kg以下となっているが、洪水の水が引けば、消費需要も通常の状態に回復し、価格が上昇することが予測され、2011年12月の平均価格は62.14バーツ/kgと予測している。
豚肉の小売価格 生豚の価格に応じて上昇しており、2011年12月の豚肉(豚のモモ肉)の小売価格は120~130バーツ/kgとなっている。
農家庭先価格
品目 2010年 2011年 推移 1月~12月 1月~12月 バナメイ品種
ホワイトシュリンプ価格70尾/kg110.53 128.91 16.63 輸出価格(FOB)バーツ/kg
品目 2010年 2011年 推移 1月~12月 1月~12月 冷凍・冷蔵エビの輸出価格 218.24 255.63 17.95
●洪水後の影響予測
①生産
中部の洪水で海水エビにも被害があったが、エビの生産量全体には大きく影響していない。これは主要な産地が南部および東部で全体の85%を占めているためである。中部はわずか15%であり、チャチェンサオ県、プラチンブリ県、サムットサコン県などである。南部の一部では今年の始めから、中部では7月から洪水が発生したが、農家は水を監視し、洪水発生前に収穫し、販売したものもあった。現在、洪水の被害にあった場所では、年末に水揚げをする分の養殖ができない状態である。そのため、一部の農家はこの分の収入を失うことになる。その他の地方の農家はエビの養殖を一時的に止めていたり、生産量を減らしている。
冷涼期に入り、生き残るエビの数が少ない。そのため、予測されていた養殖されたエビの生産量より約10%減少し、2011年のエビの生産量は490,000トンになると予測している。②国内消費
国内のエビの消費量はわずかであるため、不足はしないと予測している。③輸出
2011年のエビの輸出量は395,277トンとなり、輸出額は1,099.26億バーツとなり、原材料の減少から2010年の輸出量427,959トン、輸出額1,011.40億バーツより各7.64%、8.69%減少すると予測している。しかし、輸出額はそれほど減少しないと予測している。これはエビの輸出業者が価格が冷蔵および冷凍エビより高いエビの加工品をより輸出する傾向にあるためである。主な輸出先の米国や日本の経済が低迷しているため、受注数が減少している。2011年後期の輸出については、クリスマスや新年に利用するために業者からの予約受注が増加しており、発送するのみとなっている。④価格
農家庭先価格/輸出価格 2011年の年末の農家庭先価格は全てのサイズで上昇傾向にあった。これは原材料向けの生産量が減少し、同時に年末にはクリスマスや新年のイベントに使用するために海外からの需要が増加したためである。このほか、ベトナムや中国などの生産国がタイと同様に洪水の被害を受け、世界市場に出荷できる生産物の数量が減少した、そのため、世界市場でエビの価格が上昇した。しかし、主要輸入国による購買の主導権もあることから価格の上昇はそれほど大きくない。■淡水魚
●実情
①生産
2011年は養殖された淡水魚(観賞魚を除く)の生産量が744,400トンになると予測している。これらは土を掘って作られた養殖池や水田、魚籠などで養殖されたものである。主な生産地はサムットプラカン県、ナコンパトム県、チャチェンサオ県、サムットサコン県、ラチャブリ県、スパンブリ県、コンケン県、チャイヤプム県などである。②国内消費
淡水魚の国内消費量は生産量全体の90%で、輸出向けは10%となっている。③輸出
2010年の淡水魚およびその製品の輸出額は140億2,076万バーツとなっており、2011年(1月~11月)の輸出額は147億6,377万バーツであり、前年より8.00%増加している。タイで輸出量が最も多い淡水魚はティラピア(プラーニン)で、2010年のタイのティラピアおよびその製品の輸出量は12,936トン、輸出額は6.69億バーツであった。2011年(1月~11月)の輸出量は10,744.19トン、輸出額は6億6,542万バーツであり、2010年と比較すると各10.64%、10.06%減少している。また、2011年全体でも輸入国の経済問題から前年と比較するとわずかに減少すると予測している。④農家庭先価格
2010年 2010年1月~10月 2011年1月~12月 推移% ティラピア(中サイズ) 42.51 42.51 45.68 7.46 ナマズ 41.25 41.10 42.23 2.40 タプティム 58.58 58.87 55.75 -4.83
●洪水の影響
①生産
2011年11月30日時点で被害を受けた淡水魚の養殖および魚籠の面積は214,640.57ライとなっている。主な産地はナコンサワン県、ウタイタニ県、ウッタラディット県、シンブリ県、アントン県、スパンブリ県、アユタヤ県、プラチンブリ県、チャチェンサオ県である。被害は完全に被害を受けた養殖池や一部の魚が自然の水に流されたという状況で、天然の魚の捕獲量は増加しているが、養殖の生産量は減少している。また、生産量は今年始めの予測値より減少し、31,095.66トンまたは4.18%減少すると予測している。
②国内消費
ほとんどの淡水魚は国内で消費されているため、輸出にはそれほど影響がないと予測している。特にティラピアは洪水で養殖場から魚が逃げたため、国民が捕獲できる数が増加している。
③輸出
淡水魚はほとんどが国内で消費されているため、輸出にはそれほど大きな影響はないだろうが、ティラピアは輸出向け加工品の原材料に使用されているため、ティラピアの主産地が洪水の被害を受けているため原材料の不足問題が発生すると予測している。
④価格
それほど変化はないと予測している。自然の淡水魚の数が増えているため、一般の人々は市場から購入せずに淡水魚を捕獲することができる。そのため、商人も価格を大きく値上げしていないが洪水の水が引いた後の輸送ルートの障害で、迂回しなければならないため輸送費の上昇や都市部の人々は高値で魚を購入しなければならないであろう。
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