2011/12年度の主要農産物に対する洪水の影響
■米
●洪水前の状況と予測
①生産
雨季米2011/12年度
2011年6月時点の予測は作付面積が6,195万ライ(991.2万ha)、生産量が2,514万トン(籾米ベース)、収量が406kg/ライ(2,537kg/ha)であり、2010/11年度の作付面積6,178万ライ(988.5ha)、生産量2,434万トン、収量394kg/ライ(2,463kg/ha)より、各0.26%、3.26%、3.05%の増加と予測する。これは天候条件が適切であったこと、雨季入りが早く、降雨が十分であったことなどの理由による。そのため、収量、生産量は、干ばつや洪水の被害を受けた2010/11年度に比べて全国的に増加すると予測する。
乾季米2012年
2012年は作付面積が1,831万ライ(293.0万ha)、生産量1,080万トン(籾米ベース)、収量が647kg/ライ(4,044kg/ha)と予測され、2011年の1,610万ライ(257.6万ha)、生産量1,014万トン、1ライ当たりの収量630kg/ライ(3,938kg/ha)と比較すると各3.66%、6.48%、2.70%の増加と予測する。
②2011年の国内消費
国内消費量は籾米ベースで1,831万トン (1,208万トン精米)と予測する。内訳は1,108万トンの籾米が消費向けで、146万トンの籾米が種苗向け、577万トンの籾米が動物飼料やその他の産業向けとなっており、2010年の籾米1,836万トン(1,212万トン精米)より0.30%減少している。
③2011年の輸出
タイは国内生産の米の約31%を輸出している。世界の需要が高いことからタイは2011年に約1,055万トンの精米を輸出されるだろう。2011年11月期の関税局の報告によると、米の輸出量は1,021万トン精米、輸出額1,841.13億バーツであり、前年同時期は782万トン精米、1,478.70億バーツであることから各30.56%、24.51%増加している。
④2011年の価格
前年の価格より変動し、高い水準を維持すると予測する。世界で生産量が需要より増加しているが、世界の貿易は2010年より増加傾向にあり、9.99%増加している。これは多くの米消費国で生産が減少していることやインドネシア、マレーシア、エジプト、パキスタンなどの国で在庫需要があるためである。1) 農家庭先価格
- - ジャスミン籾米
平均15,289バーツ/トンで、2010年の13,171バーツ/トンと比較すると16.08%上昇している。このほか、政府の米の担保融資制度が 市場価格を高値に主導しているが、これは2011年の米の価格の引き上げを促していない。2008年よりバスマティ米以外の米(白 米およびパーボイルドライス)の輸出を禁止していたインドが2011年10月~2012年3月まで輸出の再開を許可し、タイ米より安く 価格が120~160ドル/トンとなっているためである。
- 雨季の白米籾米5%
平均10,826バーツ/トンで、2010年の8,364バーツ/トンと比較すると29.36%上昇している。
- 乾季の白米籾米で水分14~15%
平均8,447バーツ/トン、2010年の8,042バーツ /トンと比較すると5.04%上昇している。さらに、2011年12月時点の白米5%の価格 は平均10,826バーツと2011/12年度の米の担保融資制度を開始した同年10月の10,217バーツ/トンより1トンあたり602バーツ上 昇している。また、2010年同時期の8,415バーツ/トンより2,681バーツ上昇している。冷涼および乾燥した気候のため、米の水分が 落ちている。 2) 輸出F.O.B価格
- - 2等級ジャスミン米(新米)
平均1,043ドル/トン(31,537バーツ/トン)で2010年の1,023ドル/トン(32,149バーツ/トン)と比較すると1.96%(バーツ換算1.90%)上昇し いる。2011年12月の価格は平均1,107ドル/トン(34,253バーツ/トン)で籾米の担保融資制度が開始された10月の 1,140ドル/トン(34,935バーツ/トン)より2.89%(バーツ換算1.95%)下落している。しかし、2010年の1,032ドル/トン(30,823バーツ/トン)よ り7.27%(バーツ換算11.10%)上昇している。
タイのジャスミン米の価格は全体的に上昇している。2011/12年度のジャスミン籾米の担保融資制度が開始されたことや 2011年にジャスミン米が輸出基準に合致するように主要貿易相手国でジャスミン米の品質問題についてフォローアップしたためで ある。消費者は高額でも支払っている。しかし、年末に出荷される生産量が多く価格が弱まった。
- 白米5%
平均550ドル/トン(16,634バーツ/トン)、2010年の493ドル/トン(15,505バーツ/トン)より11.56%(バーツ換算7.28%)上昇している。 2011年12月の平均価格は595ドル/トン(18,383バーツ/トン)で担保融資制度を開始した10月の606ドル/トン(18,563バーツ/トン)より 1.52%(バーツ換算0.94%)下落している。しかし、2010年同時期の546ドル/トン(16,132バーツ/トン)より8.97%(バーツ換算12.73%)上 昇している。●洪水後の影響と予測
①生産
雨季米2011/12年度
2011年12月時点の予測は2011/12年度の生産量は籾米ベースで約2,036万トンとなり、(2011年6月時点の予測値より)478万トンまたは19.00%少ないと予測している。7月から現在までの洪水の被害地域をタイ地理情報・宇宙技術開発機関(GISTDA)の衛星RADASATのデータや農業経済局の調査から、洪水状況の米の生産への影響をフォローすると、被害を受けた米の作付面積は973万ライ、生産量は478万トンとなっている。北部⇒ 米の作付面積は約1,360万ライ、被害面積は約407万ライ、被害生産量は約205万トンと予測する。
中央部(東部・西部を含む)⇒ 作付面積は約920万ライ、被害面積は約321万ライ、被害生産量は約192万トンと予測する。
東北部⇒ 作付面積は約3,790万ライ。被害面積は約245万ライ、被害生産量は約78万トンと予測する。
なお、北部7県、中部15県のチャオプラヤ川流域の22県で作付面積は約1,489万ライで、そのうち667万ライ、336万トンに被害を受けたと予測する。乾季米2012年
作付面積は1,669万ライ、生産量は1,111万トン(籾米ベース)となり、2011年の1,610万ライ、1,014万トンより各3.66%、9.57%の増加と予測する。これはダムや灌漑用水の水量が十分にあるためで、洪水の水が引くと農家は米の作付けを直ぐに再開するであろう。
しかし一方で、洪水が発生したことで、農家は雨季米の販売から得る収入を失ってしまった。政府から1ライあたり2,222バーツの補償金が支給されるが、ほとんどの家庭で水が引いた後の生活費や農地や住居の修繕費用などは十分ではないであろう。家族で農業以外で工場の労働者などの職業に就いている家族からの収入も失っている場合も見られる。②精米加工
MOF(農民マーケティング機構)およびPWO(政府倉庫機構)が実施する2011/12年度の雨季米の担保融資制度に参加する精米業者は(2011年11月30日時点)612件となっており、MOFやPWO以外にも85ヵ所の買取場所を設定している。
担保融資制度で出荷された籾米は412.6万トン、677.62億バーツである (2012年1月4日時点)。市場への出荷量が増加していることから、政府は11月から精米業者に10日毎の精米から7日毎に精米するように指示している(2011年11月25日の担保融資副委員会で決定)。政府が精米状態に合わせて精米業者に費用を支払う。しかし、担保融資制度に参加していない比較的規模の大きい精米業者がおよそ2,000件あるが、ほとんどの業者で生産量が減少している。これは、米の国内価格が競争国のインドやベトナムより高いことから輸出業者が販売できず、米の受注が滞っているためである。③国内消費
洪水の影響を受けていない。国内の消費用、種苗用、動物飼料製造用、その他の利用の米の量が需要を満たす十分な量であることから、洪水の影響を受けていない。2012年は国内消費量が1,997万トン籾米(1,318万トン精米)となる。これは消費用が1,197万トン籾米、種苗用が165万トン、動物飼料製造用およびその他の利用が635万トン籾米で2011年の国内消費量が1,831万トン籾米(1,208万トン精米)であったため、9.04%増加している。④輸出
洪水の影響を受けていない。これは2011/12年度の雨季米は478万トンに被害を受けたが、2012年の乾季米の生産量は増加すると予測していることや、政府や民間企業が700~800万トンの米の在庫を抱えているためである。また、国内消費量を差し引いた残りの米759万トン精米(生産量-国内消費量=20.77-13.18)を合わせると、タイには輸出用の米が約1,500万~1,600万トンある。
2012年にタイは800~900万トンの精米を輸出し、2011年の1,055万トンより減少すると予測する。これはインドがバスマティ米ではない米(白米およびパーボイルド米)の輸出を再開し、インド政府が2011年10月から2012年3月の間に250万トンの米の輸出を許可した。これらはタイやベトナムの米の価格より安い。そのため、インドが輸出を禁止していた際にタイからパーボイルド米を購入していた国々がインドからの輸入を再開し、タイは多くの貿易相手国を失うことになるであろう。このほか、米国農務省(USDA)の予測では2012年のインドの米の生産量が100万トン(精米ベース)程度で増加すると予測しており、2012年の輸出量も450万トン(精米ベース)増加すると予測している。⑤価格
籾米の農家庭先価格は政府の担保融資制度により良い水準で変動することが見込まれ、平均10,000~13,000バーツ/トン(水分15%)になると予測している。同制度では米の担保価格を白米100%の籾米を15,000バーツ/トン、白米5%を14,800バーツ/トン、白米25%を13,800バーツ/トンに設定している。